●●●鳥辺野●●●

●●●幽霊子育●●●
東山の山裾に広がる鳥辺野は、古くから無常所として名高い。
その鳥辺野の墓地にほど近いところに、
「幽霊子育て飴」という飴が売られている飴屋がある。
この飴の由来にこんな話があるノ。


ある夜、飴屋の主人が休もうとしていると、表の戸をトントン叩く音がする。
「どなたかな」と、戸の外に声をかけると、
「すみませんが、飴をわけて下さいませんか」
と、今にも消え入りそうな女の声がする。 主人が戸を開けると、長い髪を垂らし、やせ細った女の姿が・・・。気味悪く思ったが、客は客である。女から受け取った茶碗に水飴をすくい入れた。
女は黙ってお金を渡し、飴を受け取ると、闇の中に消えて行った。
  翌日、前の日と同じ、丑三つ時になると、表の戸が叩かれた。主人が、戸を開けるとまた、夕べの女が立っていた。主人が飴を手渡すとき触れた、その女の手は氷のように冷たかっ


 次の日も、また次の日も夜になると女が飴を買いに来る。 主人は、番頭にその女の後を付けさせることにした。夜になり、いつものように女が飴を買いに来た。 番頭が後を付けると、女は、飴の入った茶碗を大事そうに抱え、東の方向に足早に去って行く。 番頭が後を追うと、女は円山大谷の墓地の角を曲がり、墓の間に入って行き、かき消すように姿を消した。 番頭は驚き、あわてて引き返した。
 翌日、番頭は寺の住職にことの一部始終を話した。その話を聞いた住職は、10日前に若い女が死に、この墓地に葬ったと話した。



そこで、番頭たちが、女が消えた場所まで行ってみると、 確かにそこは、若い女を葬った墓であった。 墓を掘ってみると、女の死骸の腕の中で、
赤ん坊が泣いていた。

女は、墓の中で生まれた赤ん坊のために、
幽霊になり飴を買いに来ていたのだった。

その赤ん坊は寺に引き取られ、
偉いお坊さんになったということだ。
その噂が広がり、その飴「幽霊飴」と呼ぶようになったという。



    


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