INTERVIEW 1
INTERVIEW1234
by 南條史生
−−それでは、?ファイナルホームについてお聞きしたいんですが、ああいうも のを思い付いた発想のおおもとというのは、どうなんでしょうか。
津村: 普段はファッションデザインで仕事をやっていますが、ファッションデザイ ンというのは別に機能をあまり求められない仕事で、モデルさんがきれいに見えるみ たいなことが発想の根本になっているんですが、そうじゃなくて、実際に便利で何か 役に立つ服ができないかなと常々思っていたんですね。オールシーズン対応できて、 それでいて体を外界と自然から保護できて、ある程度リーズナブルな値段で、軽くて というものができないかと、ずっと思っていました。
たまたま中学生ぐらいかな、ちょっと公園で野宿することがありまして、そこで風 を防ぐために新聞紙を体に巻いて寝たわけなんですよ。そういうのは、バイクに乗る ときとかでも、寒いとジャンパーのなかに新聞紙を入れたりして暖を取ったりするん ですけれども、そのときの経験で、新聞紙とかそういうものを入れれば暖かくなるし 、暑かったら取ればいいなという発想があったんですね、そこのところで…。 新聞紙を入れたり出したりするには何が必要かというと、ポケットだ。ポケットが いっぱいある服を作ればいいんだ。ただ、限りなくパッチポケットがたくさんある服 というのも、なんか手間だな。ということは、そうか、裏地と表地の間に空間がある だろう。その空間を何か利用したら、そこにモノが詰められるんじゃないかと思って 、それを何個かに分割してジッパーだけ閉めて出し入れができる。要するに、断熱材 を入れた家のような考え方で服ができるんじゃないかというのが、発端ですね。
−−なるほど。そうすると、もともとのポケットというのは断熱材を入れるというと ころから出てきた発想なんですね。
津村: そうですね。空間があるわけです。普通は表地と裏地の間は空間とは考えな いんですが、すごく見落とされている空間だなと思って…。
−−それからもう一つ、ファッションというのはやはり人間を美しく見せるためのも のだという考え方がありますよね。それと、いまおっしゃった被服としての機能とい うことは、ある意味では対極にあるかもしれないと思うんですが、そのへんの関係で 、いまのお話を聞くと、ファイナルホームというのは機能がまず根本的に優先して いるというふうに思えるんですが、その見え方というか、美のほうについてはどうい うふうにお考えになっていますか。
津村: たとえば最近、アウトドアウエアというんですか、たとえばフィッショング ベストを着るファッションだったり、マウンテンパーカを着たり、スノボーのウエア を着たりして、町なかを歩くということもあるんですが、それ用に作られているもの をその機能を抜いた状態で、全く機能しない状態の都会というところで、たとえばフ ィッシングベストを着る。あんなポケットなんて何も意味ないのに、究極の状況とい うか、それをやはり格好いいと人は思っていると思うんですね。 ある種の不格好さ とか、格好悪さというものも、場所を変えると、たとえば都会という、全く山にも登 らなければ釣りもできないようなところで、そういうものを着るのは、逆にデフォル メされたものがむしろエンターテインメント性を持ってくるというか、一つのインパ クトになってくるんじゃないかと思うんです。
そうすると、それが従来の、たとえば女性だったら八頭身の体形を美人というとか という図式には入らないかもしれませんが、インパクトというか、エンターテインメ ント性という意味では、おもしろいなと思うんです。
−−機能を突き詰めていくとそれが美に至るという考え方が、実は近代主義の考え方 の根本にあったと思うんですね。だから、一見見たところ、あまりモダン、クラシッ クという感じはしないんですが、コンセプトとしてはかなりモダンなコンセプトとい うのがある。そういう気もしますね。
津村: そうですね。というのは、作るときに、ポケットのサイズを均等に作らなくちゃなら ないと思った。というのは、なかに入れるもののことを考えると、たとえばダウン入 りのクッションというのも作っているんですが、それを入れていくとダウンジャケッ トになるんですね。すると、そのサイズを均一化するためにポケットのサイズも均一 化しなくちゃならない。 そうすると、すごく平面的なパターンというか図面を引いて、ほとんど直線の図面 なんですが、その発想というのは着物に通じるような発想で、ヨーロッパの服みたい に立体感が全然ないんですね。ペタンとした平面的なパターンで、それをポケットの サイズに分割していく。
−−そうすると、日本人の体形ということについてはどうですか。ある意味では欧米 腎に比べると平らというか、フラットな感じがすると思うんですが…。
津村: そうですね。だから、そういうフラットなものの作り方の発想をするのは、 日本人ならではだと思うんですが、これはヨーロッパの人にも合うんですよね。とい うのは、サイズがある程度ルーズだということと、なかにものを入れていくとその分 が膨らみになって、体にフィットすることにもなってくるわけです。だから、わりと 大きめなものがポケットが膨らむことによって、どんな体形にも合ってくる。これは あとからわかったんですけど…。