INTERVIEW 2
INTERVIEW1234
by 南條史生
−−ポケットは、最初の発想は新聞紙を入れたりとか、断熱材を入れるという発想か ら来ているんですが、それ以外に、ではたとえばどういうことにそのポケットが使わ れていくというか、何が入るということをご自身で想定していましたか。
津村:機能優先の服だったので、たとえば災害時に、避難用リュックとかに入ってい るようなものがありますよね。乾パンだったりとか、ラジオだったりとか、懐中電灯 だったりとか、そういうものも一緒に入れておけるなと思ったんですよね。 最初からそういうものを入れて、たとえば家の隅にでも置いておけば、ちょっと地 震が起こったときなんかにはそれを着て逃げればいいや。頭の部分とか、肩とか、た とえばものが落ちてきてちょっと危険なときには、そういうところにクッションの代 わりのものを入れておけば、ちゃんとプロテクションにもなるだろう。それから、非 常用の食べ物とか、たとえば瞬間的に暖かくなる…。何というんですか。
−−サーモヒーターみたいな…。
津村: ええ。そういうものも入れておけば、もっと暖かくなるだろうし…。
−−そうすると、一種のサバイバルツールとしての価値ということがあると思うんで すね。
津村: そうですね。
−−そうすると、これはいま売っていらっしゃると思うんですが、商品化されている わけですが、たとえば神戸の災害のあとに、売れ行きが伸びたというようなことはあ るんですか。
津村: あのときは売り出して本当に間もなかったですよね。あの震災のときに、自 分が会社から何着か買って送ったんですよ、実際に。本当にああいうところに役立つ ウエアだろうなと思って送ったんですが、そのあとに売り上げが伸びたかどうかはち ょっと具体的には知らないんですが、緊急用のリュックとか、そういうものがブーム になったので、たぶん伸びたとは思いますけど…。
−−そうしますと、では神戸以外に、いま現在、たとえばそういった災害時とか、難
民の方がいらっしゃるようなところで、使われている事実というのはありますか。
津村: これは、
−−そうすると、流通ということに関していえば、たとえば普通の商品のようにお店 で売るということだけじゃなくて、いろいろなかたちの流通を考えていらっしゃると いうことですね。
津村: そうですね。
−−たとえば難民に届くというのは、こちらから一方的に送る方法もあるんですが、 たとえば世界中に問い掛けて、何かそういったネットワークを構築していこうという ようなことも可能でしようかね。
津村: そうですね。いまはたまたまある1社で作って販売しているというかたちな んですが、その会社の仕組みによって、ある値段というものがはじき出されてくるわ けなんですが、たとえばそれをアメリカ政府が生産するとか、中国が生産するとか、 そういう規模になってくればもっと安くもなるでしょうし、それなりにたとえば素材 に対しても研究開発がもっとなされれば、もっといい素材とかもできてくるとは思う んですね。
−−現在の使われている素材を選択した理由と、それから今後どういう素材を使って いくといいんじゃないかというお考えがあったら、ちょっと聞きたいんですが…。
津村: いま現在、たとえば強さとか、そういうことだけで言ってしまうと、本当に 消防士が使っている素材とか、軍が使っている素材とか、燃えない素材とか、いろい ろあるんですが、すごい高いわけなんですね。一般の人たちが買う値段にはならない わけなんです。そこから逆に発想していくと、最低限雨風がカバーできるナイロン素 材、これは値段のほうから入っている発想なんですが、都市のなかのある程度のサバ イバルには、それで十分だろう。そのへんで決定されていますね。 だから、理想からいうと、本当に軽くて、やぶけなくて、雨でも風でも何でもはじ き返すけれども、湿気とかは発散する。そういうものが安く手に入れば、それに越し たことはないわけですね。
−−都市のサバイバルということがたぶん前提にあると思うんですが、天候の変化と か、気候の変化とか、そういったことと衣服というものの関係というのは、どういう ふうにお考えになっていますか。これはそれにもちょっと出ているとは思うんですが…。
津村: ええ。都市がだんだん発展してきて、地下道ができたりとか、アーケードが できたりとか、冷暖房が完備されてくると、昔、たとえばウールのすごくヘビーなコ ートを着ていた時代もあったと思うんですが、ほとんどそういうものがいらなくなっ て、どんどん軽いウエアにみんながなるようになってきていると思うんですよね。 極端なことをいうと、冬でも家のなかをガンガン暖房をつけてアロハでいるアメリ カ人とか、そういうふうに季節感というのがどんどんなくなってきて、そういう都市 のなかでの便利とされるウエアというのは、やはりその変化に対応できるものがいい んじゃないかなとぼくは思ったんですね。
−−ということは、非常に激しい自然にさらされることが少なくなってきているので 、サバイバルウエアとしてもある意味では対応の幅が狭くなってきているということ もあるのかもしれませんね。通常の衣服に関しては…。
津村: そうですね。だから、たとえばジーンズなんか一つとっても、カウボーイが 仕事をするためのウエアなんですが、それを都会のなかではく必要というのは全くな いわけなんですね。あそこまで丈夫なものを…。けれど、やはりそういうものが都会 のなかでもはかれていくというのは、そういう究極の状況とかにロマンというものを 持っていて、それを消費しているというんですか、あこがれを持ちながらそれぞれの ステージの上で、それぞれの人たちがエンターテインメントしているというのが、都 会なのかなと思うんですよ。
−−そうすると、ある意味ではファッションのステージである。
津村: そうですね。
−−たしかにファッションというのは、見る人間がいないとおもしろくないというと ころがありますよね。コミュニケーションの一つのツールになっている。
津村: そうですね。自然からプロテクションする必要がない代わりに、今度は人間 が多いですから、精神的なプロテクションというのが必要になってくると思うんです よね。そこで、たとえばブランド品を身につけるということは、ある意味で自分は高 級な人間だから、あなたは近寄らないでください。近寄れる人と近寄れない人を区分 けする標識としてブランドというものがあって、それは都市のプロテクションの一つ の機能というんですか、そういうのも考えられると思うんですよね。 このファイナルホームというのも、ある意味で全部に断熱材の代わりの、たとえ ば新聞とかを入れてガバッとさせれば、気分的にはすごくプロテクトされている気に もなりますよね。
−−そうですね。ファイナルホームというタイトルからもだいたい見当がつくんで すが、建築ということも意識なさっていると思うんですよ。最低ギリギリの建築とい うことで、建築とのはざまにあるという考え方もおありになるんですか。
津村: ええ、そうですね。インディアンにしろ、モンゴルの人たちにしろ、そうい う遊牧したり移動したりする人は、テントとか、毛布1枚とか、毛布をまとってしま えば服なんですが、ちょっとかけると屋根である。それは建築の分野に入る。その素 材と自分との間の空間のあき方のちょっとした差で、それが建築だったり、服だった りという差ですか。だから、それが同時に移動していけば、家そのものが移動してい る。ヤドカリみたいなものですよね。 その服がすごく機能的で、夜たとえば野宿しても対応できたら、家と一緒なんじゃ ないか。空を天井と考えればいいんじゃないか。まして都会なんていうのは、アーケ ードがあったり、ビルのはざまだったら、ほとんど室内と同じような空間なんじゃな いか。だったら、服だけで十分とも言えるだろうと思ったわけですね。
−−そうすると、われわれが通常考えているよりは、建築とファッション、衣類との 境界というのは実は曖昧なものかもしれないですね。
津村: そうですね。日本人も、昔はたとえば障子の外は自然というんですか、すご く近かったわけですし、縁側とかもよくいわれますよね。外と内側の中間地点の…。 そういう感覚はたぶんもともと持っていたのかなと。
−−そうすると、本当に被膜と向こう側とこっち側、障子なんかは紙1枚ですよね。 そういうことによって仕切られていた空間が、観念的にも非常に違うものになってい く。それが建築の内側になっていく。あるいは建築の内容になっていく。そういうよ うなことを考えると、被膜というものの意味というのは実はものすごく大きいかもし れないですね。
津村: そうですね。