溜まり醤油

伊勢平野は日本の真ん中に位置し、東西文化が混在する分水嶺とも言えます。味覚の面でも、東西の味をうまく譲り受けつつ独自の「溜まり醤油」の味を育ててきました。溜まり(たまり)と醤油を区別しない呼び方からもうかがえるように、伊勢には独特の味覚文化があります。
もともと農家で自家醸造していた味噌の樽に溜まった汁を、調味料として使ったことから、「溜まり」は生まれました。醤油を醸造するより手軽であることもあって、多くの家庭で調味料として使われました。味噌の樽から取れなくなると塩と水を加えて再び取ったほど、溜まりはこの地で重宝がられたと言います。
また、江戸時代には日本一の「旅行地」として年間40〜50万人の参詣客を受け入れてきた伊勢は、同時に大量の醤油消費地でもありました。伊勢の名物のしぐれ煮、「たがね(溜まりかきもち)」、牛肉しぐれ、そして伊勢うどんのタレなどには、溜まりを使ったものが多くあります。
今でも、溜まりのうま味と香りは、濃い口の溜まり醤油に生きています。


伊勢うどん

ずんぐりと太い麺にとろりと濃いタレがかかった伊勢うどん。タレはあくまで少なめで、うどんが幅をきかせています。うどんの常識をくつがえすような独特の見てくれと素朴な味わい。タレは一見したところでは、濃い味のように見えますが、食べてみると案外まろやか。お伊勢さんに参ったら、ぜひ食べてみたい伊勢の味です。

赤福(あかふく)

宝永4年(1707年)に五十鈴川のほとりに店を出してから280年余り、赤福はお伊勢参りの人々の旅の疲れをいやしてくれる甘味をふるまってきました。老舗の味を守り続け、今の店主は10代目。赤福では、朝4時に竃(かま)の火を焚くことを一日も欠かさずに続けたとか。屋号は「赤心・慶福(せきしん・けいふく)」という言葉に由来します。赤心つまりまごころを持って他人も己も幸せ(慶福)であれと願う、神宮参拝者の心持ちから名付けられた名前です。赤福にはいつも大勢の参宮帰りの客がつめかけ、いつのまにかツバメまで店先に巣を作るようになりました。



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