だが、じつは何ら特別な薬やバイオ技術を使わない一種の水気耕栽培(「ハイポニカ」)で、そのトマトの巨木を育てた一人の賢者は言った。

奇跡でも何でもない。
私たちが「生命」というものの本性を知らなかっただけだ。
植物のポテンシャルは、
私たちが思っているよりもずっと大きい。
そして、それは「人間」についても同じなのだ。

 こうして一本のトマトの木は、安全な“食糧増産”の手段である以上に、私たちの“生命観の変革”を迫る、地球と人間の新たな自己認識の物指しとなった。

 賢者は一本の草木の情報宇宙と交感しながら静かに踊り、何の変哲もない植物の微かな「聲」に聴きいりながら、広大な生命世界の秘密に触れる。