

こういう話を聞いて、
人はこれは荒唐無稽の幼稚な未開人の作り話と思うであろうか。
それともここには古代人の叡智と直観と
豊かな想像力が表現されていると思うであろうか。
私はこの話を思い出すたびに、
心の底からの嬉しさと愉快な感情とともに、
神々と、それをこうした物語をとおして信仰した古代人に対する、
畏敬と感謝の思いがわいてくる。
そればかりではない。
この神話は大地の生成についての
深い知恵を伝えているということに気づかされるのだ。
大地自然は陰の力(女性原理)と陽の力(男性原理)との
交錯・合体によって生み出される。
そして、その産出行為のクライマックスが
火神出産の場面である。
それはまさしく火山の噴火活動を象徴している。
イザナミの女陰(ホト)とは、
火山の火の留まるところとしての「火処(ホト=火留)」なのだ。
そこから万物が生み出されてくる始源の穴。
その始源のステーションを通って、
神々も万物も人間もこの世界に現れ出てくるのだ。

