1996年5月23日(木)・高知県室戸市佐喜浜漁港 (天候などの条件)=薄曇り、2日前に雨、波1.5〜2m、風やや強い。水平線はクッキリ見える。 陸地の気温23.5℃、海上の気温21℃、海水20℃ 下り潮、潮の色はまあまあ。 |
前日の目撃情報を漁業無線で入手して、佐喜浜港より南東の方角へ約10km移動。 |
長岡船長のマル秘マップ。クジラに出会ったポイントをびっしりと書き込んでいる。 |
■長岡談: 「こんな天気を室戸ではマッコウ日和と言うんで。 昨日はかなり見えましたよ。」 かすかに室戸岬が見える。 |
舳先から海面すれすれに飛ぶトビウオが見える |
試みにマッコウの存在を確認するためにハイドロフォン(水中マイク)を入れてみましたが遠くを航行する船のスクリュー音しか聞こえませんでした。 |
海面にゴミが点々と浮んでいると思って、目を凝らすと、飛び疲れたミズナギドリでした。本物のゴミ(空カン、ビニール)もちらほら。船上から決してゴミを捨ててはいけません。波は天気予報通りに高い。さらに風が強く波頭が白く見える。これで、マッコウのブローが見えるのだろうか・・・少し不安。南西の方向へ約5.5kmほど移動することに決定。 |
物見台から突然、『ブロー』の声が上がる。第2末広丸は急停船。全員が物見台の人が指をさす方向を凝視する。200mほど前方5ヵ所に同時にブロー(潮吹き)が見える。第2末広丸は、微速前進。ゆっくり、ゆっくりとブローが見えた方向へと進む。水面ばかりを見つめているので、どれくらいの距離を進んだか分からない。と、突然、右舷から体長15mのマッコウが姿を現わし、ゆっくりと船の前を横切って行く。手を伸ばせば届きそうなほど近い。 |
■長岡談: 「いや、エンジンは切らない方がいいんです。クジラには、同じ調子の音を聞かせておく方が安心しますからね。」 |
完全に横切った後、ゆっくり追尾を開始。時折、潜行する真似をするが、まるで船を誘導するように、ゆっくり、ゆっくりと進む。きらきらする海を長時間見つめ続けるのはかなりつらい。つばのある帽子と紫外線カットのサングラスは絶対に必要です。 |
5〜6分も誘導ごっこを楽しんだマッコウは、ペンダクルアーチ(背中を大きく丸める)をして潜水を開始。最後に「さようなら」の合図のようにして尾ビレを立て海中に姿を消したのでした。 |
じっと息を殺して波のむこうのマッコウの姿を追っていると、このマッコウの姿がだんだん大きく見えてきます。目の錯覚かと思ったのですが、実際に、マッコウは真直ぐ船に向ってきました。その黒々とした巨大は、まるで潜水艦のようです。 |
頭部の噴気孔も、はっきりと見えます。握りこぶしがスッポリと納まりそうな、大きな鼻の穴です。船上は、もう大興奮状態。歓喜のパニックです。 |
マッコウが海中に消えた後、彼らの声を聞くためにハイドロフォン(水中マイク)を波の間に静かに入れてみました。 すると、貝ガラをこすり合わせるようなマッコウの“声”がイヤフォンを通じて耳に飛び込んできました。 |