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ハナゴンドウ

ゴンの観察日記


 平成2年(1990年)2月末、ゴンちゃん三津漁港へ

ハナゴンドウ定置網にかかったハナゴンドウが三津漁港に連れてこられました。洋上で網を切ることができないということで、時々、室戸の漁港にはクジラが連れてこられるそうですが、本当の理由は、漁師さんが子供たちにクジラを見せてあげるためのようです。連れてこられたクジラは、ほとんど1〜2日漁港を泳ぎ回って、やがて海に帰って行くそうですが、このハナゴンドウは体の具合が悪いような様で、居心地の良い漁港から出ていく気配が全くありませんでした。
(撮影・高知新聞・矢野カメラマン)

 3月初旬のゴンちゃん

ハナゴンドウさっそく、オキゴンドウを飼育している高知市の桂浜水族館に連絡。検査の結果、ゴンちゃんは病気ではなく妊娠しているということが分かりました。
それを知った日から毎日、妊娠したゴンちゃんに栄養をつけさせるためにスルメイカをもって、三津漁港に通いました。最初、何気なくスルメイカを差し出した時、人間の手から直接エサを食べると思っていなかったが「あっ、食べた!」と大変驚きました。しかし、漁師さんから、そんな風に人間に馴らしてはいけないと注意されました。人間に馴れ過ぎたクジラが不用意に船に近づきケガをすることがあるからです。そしてこのハナゴンドウは、見に来る人々から“ゴンちゃん”と呼ばれるようになりました。

 3月26日出産

ハナゴンドウゴンちゃんは、三津漁港の中に居つづけたまま出産しました。しかし、その仔クジラは死産でした。母親のゴンちゃんは、その事に気づいているのか気づかないのか一生懸命に、仔クジラを泳がせようとしているのでした。様子を見にきた水族館の人が薬を投与することを決めました。スルメイカに薬を詰め、それを食べさせました。
(撮影・岩本久則氏)

●高知新聞(H2.3.28)記事

 4月初旬ゴンちゃんに声援

ハナゴンドウ薬の投与で、すっかり元気になったゴンちゃんでしたが、それでも一向に、三津漁港から出ていこうとはしませんでした。そのうち、ゴンちゃんの姿をひと目見ようという人たちが、連日、三津にやってきました。ゴンちゃんはその人たちに元気な姿を見せるかのように、ビニール袋を海面からすくい上げては背中に乗せて泳いでました。まるで芸を披露しているようなゴンちゃんでしたが、その仕草は、仔クジラを懸命に背負う姿そのものでした。「ガンバレ!ゴンちゃん、早く元気になって太平洋で泳いで下さい」ゴンちゃんを見守る人たちは、みんな心の中で叫んでいました。

 4月15日サヨウナラの前夜

ハナゴンドウゴンちゃんを海へ帰す一度目の試みが失敗に終わり、明日こそという日の夜、そっとゴンちゃんの様子を見に行きました。ゴンちゃんは漁船の下にもぐり込み、じっと何かを考えているようでした。もしかすると、仔クジラが沈んでいる港を離れたくないと思っていたのかもしれません。手で海面をピシャピシャと打ちました。ゴンちゃんとの合図です。ゴンちゃんがゆっくりと近づいてきます。しかし、手にスルメイカはありません。しばらく考え込んでいたゴンちゃんでしたが、やがて静かに漁船の下へと帰っていきました。

 4月16日サヨウナラ、ゴンちゃん

ハナゴンドウ
4月16日、いよいよお別れの日です。ネットで、そっともちあげられたゴンちゃんは、室戸の沖で、海におろされました。港と様子がちがうので、ちょっと、とまどっていました。一瞬、ぐっ、と体を沈めましたが、すぐ頭を出し、船にすりより離れようとしませんでした。何秒か見つめていると、ゴンちゃんは船の上の人たちを見回した後、ふいっと船から離れ青い海に潜っていきました。

海にでかけた時、群れの中では分からないゴンちゃんが目の前に姿を見せてくれたら、今でもゴンちゃんと確認できます。でも、再会した時、お互いにどんな顔して会うんでしょうね。

●高知新聞(H2.4.17)記事
●ゴンちゃんの紙芝居・本
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