孤独な前衛芸術家






文:野猫


荘輝
ZhuangHui
前衛芸術家
河南省出身
30代前半


オンボロタクシーを下りて、先にたって案内する彼を追って細い路地を入って行く。
北京の南のその地区は外国人はまず訪れることもないような殺伐とした街だった。
初めて足を踏み入れる胡同。 小さな中庭をいくつかの小部屋が囲んで、その一つが彼の自宅だ。 外の喧騒が嘘のように静かで、天井には自分で取付けたらしい扇風機がゆっくりと回っている。 10畳ほどのその部屋はきちんと整理されているのだが、ガランとして見事なほどに生活感がない。

自作の他にも友人から預かっている作品などが、きちんと整理されて壁際や小さな机の上に置かれている。 手作りのテーブルの上に作品を出して説明をしてくれた。
北京ではパフォーマンスやインスタレーションの公開の場や機会がほとんどないため、それらを写真に収めることで制作記録を兼ねた作品を制作しているらしい。
北京の前衛芸術は数年前がもっとも盛んだったそうで、最近はかなり低調らしく、特に今年になってからは、全くだめだね、という。

彼のことをどう紹介すればいいのだろうか? 前衛芸術家?
北京へは芸術活動の場を求めてやってきたのだというが、この中国で社会制度からはみ出て、またはその境界線上で、実験的・前衛的な芸術活動を個人が継続して行うこと、それは簡単なことではない。
つまりは身分保証をしてくれるバックのない中で孤立無縁の闘い。 もちろん仲間はいるには違いないが彼らにしたって似たような境遇のはずだ。

面白い彼の話に引き込まれて、気がつくと数時間が経過していた。
internetを使っての活動にも興味があるようだった。
「僕たちのこの活動も年末までの実験的なものだけれど、興味はある?」
「もちろん、次に会うときまでには自分のプランを考えてみるよ。」
「一緒に何か出来ればいいね。」
「そうだね!」
「今日は本当にありがとう。じゃ、またね。」
「再見!」




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