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是非紹介したい人がいるという。
北京取材の水先案内人の一人王易が、僕たちを案内したのは王府井の東に位置する繁華街、東単の表通りから少し入ったところにあるマンションだった。 エレベーターで最上階まで上がったところに戴士和先生の自宅があった。戴士和、現代中国美術界の指導者の一人である。 自らも絵筆をとる現役の画家であるのだが、後輩・年軽も画家たちの育成にも力を注ぐ他、美術叢書の編撰にも当たる。 実に多忙な人なのだそうだが、僕たちの訪問を快く受け入れてくれた。
壮年の力強さと優しさが同居している大きな手。 眼光は鋭いのだが、人を遠ざけるようなものではなく、深い慈愛を感じさせる。 この人としての厚みは何処から来ているのだろうか? 先生からいただいた画集を広げて捲っているうちに最後に先生の略歴にゆきあたった。 決して平坦とはいえない人生、答えを見つけたような気がした。
この数十年間、確かに日本でも大きな変化があったのだが、すぐ隣の中国では文化大革命という嵐のような季節があったのだ。 それを生き延びるだけでも大変なことなのに、その中で自分の芸術への希望を絶やさずに闘い掴み取るためには、どれほどの苦労を重ねたのだろうか。 今、穏やかな陽光の下で創作に専念できることがどれだけ幸せなことか。 このような中国の中年層の知識人、芸術家が、経験してきた道のりを僕たちはどれだけの共感と同時代性をもって理解することが出来るのだろうか?
文:野猫
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