百鬼徒然袋 巻之上
(国立国会図書館所蔵)
石燕曰く
東都の城門にかけて世をのがれし賢人の冠にはあらで、このてがしはの ふたおもてありし佞人のおもかげならんかしと、夢こごろにおもひぬ。
解説
「徒然草」の第六十五段では、「この頃の冠は、昔よりは遥かに高く なりたるなり。古代の冠桶を持ちたる人は、はたをつぎて、 今用ゐるなり」とあり、冠は官位の象徴ですから、今も昔も権力や勲章を 欲しがる人間の心は変わらないようです。
このような権力欲・名誉欲にとりつかれた人間のかぶった冠は、その欲が 取り憑いて妖怪に変化するのでしょうか。