百鬼徒然袋 巻之下
(国立国会図書館所蔵)
石燕曰く
赤沢山の露ときへし河津三郎が行騰にやと、夢心におもひぬ。
解説
河津三郎というのは「曾我物語」に出てくる曾我の十郎五郎の父親で、 工藤佑経に狩の帰り道に暗殺されました。行騰(むかばき)とは熊や 鹿の皮で作られた、狩の時に腰につけて垂らして袴と両足を覆う 物ですが、狩の帰路で暗殺された河津三郎の行騰であれば、その恨みも 残って妖怪に変化してもおかしくないと思ったのでしょうか。