百鬼徒然袋 巻之中
(国立国会図書館所蔵)
石燕曰く
身体髪膚は父ははの遺体なるを、千すじの落髪を泥土に汚したる罪に、 かかるくるしみをうくるなりと言ふを、夢ごころにおぼへぬ。
解説
父母から受け継いだ体の一部であるのに、切った髪や抜けた髪を粗末に 捨てると、髪が意志を持って当人を苦しめるのでしょうか。
髪が霊的な力を持つというのは古くから知られていて、あるいは遺髪の ように死亡した人の意志が込められることもあります。ニューギニアの 一部の部族では髪が記憶を持つと信じていて、髪が抜けるとその部分に 応じて物忘れをするそうです。