石燕曰く |
上州茂林寺に狸あり。守霍つねに茶をたしなみて茶をわかせば、
たぎる事六、七日にしてやまず。人のその釜を名づけて分福と云。
蓋文武火のあやまり也。文火とは縵火也。武火とは活火也。
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解説 |
有名な文福茶釜に化けた狸のことです。石燕の説明のように茂林寺では
守鶴という僧に化けた狸が七代の住職に仕えたそうですが、昼寝している
ときに尻尾を小僧に見つかって、寺を出ることになったそうです。
僧としても立派だったので引き留めたが、去るにあたって、源平合戦の
様子や釈迦の生前の様子の幻をみなに見せて去ったということが、
「本朝俗諺志」に記されています。
茂林寺の茶釜が狸の化けた物だという言い伝えはあるのですが、それが
この守鶴に化けた狸と同じ狸なのかどうかはよくわかりません。
また茶釜については、助けた狸が恩返しのために茶釜に化けて和尚に
売られ、また狸になって戻ってきたという恩返し型の物語も伝えられて
います。いずれにしても「狸
」には、狐と同様に化けるにしても
ユーモラスな話が多く残されています。
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