能「翁」の起源はチベットにある?(3)

チベット旅行のことはここでは書きませんが(書くととても長くなるので)、ひとつだけ書かせてもらいますと、「チベットで見る夢は変だ」ということを感じたのです。

お金はなく、ひまだけがあったので中国国内をあちこち回りながらラサに着いたのですが、見る夢が違うのです。高地だからでしょうか?とても鮮明な極彩色の、まるで幻影のような夢をみます。この鮮明な夢が能の原型なのかな、とも思いましたが、それについてはまたの機会に(ルシッドドリームと能)。

で、「翁」の「とうとうたらり」ですが、結局あったのです。

と書くとすぐに見つけたように思えますが、ここでその苦労を書いてもしかたないので省略しているだけの話で、やはり若い人に聞くとみんな

「知らない」

と答えました。

しかし、あったのです。それも割とポピュラーなものでした。

はじめは若い女の子だけに声をかけていました。ところが彼女たちはみんな知らないというので、その中のひとりのお母さんを紹介してもらいました。

お母さんは

「テレビでそんなのを聞いたことがある」

とのこと。

で、お母さんに紹介してもらって、もっと年をとっている人に聞くと、その人は

「ああ、それなら知ってる」

と言って歌ってくれたのです。

その歌は「翁」の「とうとうたらり」とはちょっと違っていました。

「あらたらたらり」と歌うのです。よく聞くと「たらたらたらり」と歌うこともあるようです。「だらだらだらり」と発音する人もいるそうです。

「これは何の歌ですか」

「ケサル王と言って昔の英雄の伝説を歌った歌の最初の部分だよ」

ケサル王伝説の最初の部分

「ア・ラ・タ・ラ・タ・ラ・リ」と読める


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