「安達原」あらすじ(4)


血塗れで異臭を発する死体の山を目にしてしまった能力(のうりき)はもう祐慶に叱られることなど気にしていられない。このことを祐慶に報告して、一目散に逃げていった。

祐慶は閨をのぞいてみた。能力の言うとおりの閨のありさまだった。死体の山と蛆と異臭に息がつまる。

そこに積み上げられている死体を見る祐慶らの頭の中に、

「安達原の黒塚」に鬼の住処がある

と歌われた古歌の記憶が突然よみがえった。

王朝絵巻といい古歌といい、時のはざまに紛れ込んでしまったような感覚に襲われた祐慶と弟子もさすがに動転してしまった。

足をからませながら逃げて行こうとする祐慶と弟子。2人はその時、今までは月明かりが皎々と射していた安達原に突如雷鳴がとどろき稲光までもがするごく光ったのを見た。

強風までもが吹きすさび、祐慶たちの行く手を遮るのだ。

後ろを振り返ると鬼の姿と化した老女が薪を背負い、杖を振り上げながら祐慶たちを追っている。

「恨めしいぞ、祐慶阿闍梨。あれほど閨の中を見るなと言ったのに、なぜお前達は見たのだ」

その迫力に祐慶たちはもはや逃げることは無理と思い、日頃の修行を見よとばかりに祈祷をはじめた。

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