「安達原」あらすじ(3)


老女は暖をとるために山に薪を取りに行ったが、祐慶に同行していた能力(のうりき)はどうも老女の最後の言葉が気になってしかたない。

大体、祐慶は坊主だ。それも阿闍梨(あじゃり)だ。阿闍梨と言えば、ただの僧ではない。僧の教師ではないか。その祐慶に対して閨(ねや)を見るなとは何事だ。言われなくても他人の閨など見るわけがないではないか。

「これは閨の中に何かを隠しているのではないか」

と思い、祐慶に

「ちょっと見てみましょう」

と提案する。

しかし、祐慶は

「老女と約束したからだめだ。それよりも眠りなさい」

とつっぱねる。能力(のうりき)は寝よう、寝ようと思うが、気になってしかたない。祐慶の目を盗んで覗いてしまおうと何度か試みるが祐慶の眠りは浅く、すぐに見つかってしまう。

何度かの試みののち、やっと祐慶のそばを抜け出した能力はそっと老女の閨を覗いた。

しかし、そこで見たものは能力が想像していた以上のものであった。

天井に届かんばかりに積み上げられた死体の山、山。その死体は醜く膨張し何ともいえない臭いを発していた。また、死体の穴という穴からは膿汁や血液が垂れ流され、腐った皮膚には蛆が蠢いている。わきには白骨と化した死体もころがり、それらの者の亡魂か、人魂がぼうっと光っているではないか。


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