熊野から出てきた阿闍梨祐慶(ゆうけい)とその弟子たち。陸奥の安達原にさしかかったところで日が暮れてしまった。
月明かりだけの茫漠たる草原の向こうに、ぽつんとひとつ光が見える。おそらくは人家であろう。今宵はあそこに宿を借りようと思い、その家に近づく。
荒れ果てた藁屋の中から老女のつぶやきが聞こえる。
身のはかなさを嘆いているようだ。祐慶とその弟子は一夜の宿を老女に頼むために案内を乞うた。老女は宿のみすぼらしさを恥じていったんは申し出を断るが、祐慶たちのたっての頼みに家の中に招き入れる。→NEXT
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