私たち人間と、イルカ・クジラの共通点は何でしょうか。肺で呼吸すること?ほ乳類であること?…でも、最も大きな共通点は、共にこの「地球」という惑星(ほし)に生きていることではないでしょうか。
 みなさんは毎日の生活の中で、自分が「地球に生きている」ということを感じることがありますか…?ひょっとすると、わたしたち人間とイルカ・クジラとの最も大きな違いは「地球に生きている」ということを、どれだけ感じて生きているか、というところにあるのかもしれません。
 毎日の生活の中で、自分が「イルカ・クジラと同じ地球に生きているんだ!」と実感できる瞬間がたくさんあればいいですよね。
 ニューズレター・ポッドがお送りするシリーズ「地球に生きること」。毎回身近なものごとをテーマに、「地球に生きること」を感じながら生活するためのヒントを提案していきたいと考えています。

シリーズ「地球に生きること」。今月のテーマは「土」です。!

土は生きている
土について、みなさんはどれくらいのことを知っていますか?たとえば、砂と土との違いって何だと思いますか?土に含まれていて、砂に含まれていないものはなんでしょう?それは「腐植」と呼ばれる植物が枯れて腐ったもの。これを含んで、初めて「土」なのだそうです。そしてこの腐植の中に、無数の微生物が生きています。土は生きているのです。

 しかし、都会に暮らしていると、直接土に触れる機会はとても少なくなっています。道は全てアスファルトで覆ってしまい、川岸もコンクリートで固めてしまう。形を自在に変えていく水や、色も形のない空気とは異なり、比較的人間の自由になりやすかった土に対して、人間はどんどん土に手を加えてきました。「もっとたくさん、もっと楽に」という欲から、土を生きているものではなく、ただ汚れるものとして、出来るだけ遠ざけているようです。

 ところが、その一方で休みの日には、海や山に人が押し寄せ、家で植物を育てる人も多い。土とのつきあい方をうまく使い分けているということかもしれませんが、ことはそんなに簡単ではないのではないでしょうか。

 土と私たちの関係と、水とイルカたちとの関係を比べてみると、私たち人間がこれまで自然とどのように関わってきたのかがよく分かるように思います。
 人間社会はこれまで自分たちに便利なように、自然に手を加えることによって栄えてきました。その中で近年、特に自然のありのままの姿を、人間の手が変えてしまったもの…その代表的なものが土ではないでしょうか。


土とのつながり…「食べる」
 朝起きてから夜眠るまで、一日中土に触れることなく暮らしているつもりでも、必ず毎日、土のお世話になっているはずです。それは「食べる」ということです。野菜や果物など、わたしたちはほとんど毎日、土に育ち、土から育まれたものを口にしています。
 私たち人間は、土が育む生命(野菜や果物)を「食べる」ということを通して、土と深く関わっているのです。しかし、いつの間にか、食卓にのる食べ物の大半を輸入に頼り、「食べる」ということから土を感じることができなくなっています。

 「食物連鎖」というのをご存じですね。植物が草食動物に食べられ、草食動物が肉食動物に食べられ…そして、枯れていく植物や、死を迎えた動物など、地上に生きる全ての生命は、地中の微生物によって分解され、土に還ります。陸の生物は全て土に還り、海の生物は全て海に還るのです。そしてその土からまた、新しい生命が芽生えていくのです。

 しかし、私たちは、土が生きているもの、さまざまな生命を育むものであるということを忘れ、地面をアスファルトやコンクリートで覆ってきました。そしてまた、本来土に還すべき生ゴミを燃やし、排泄物を海へ流してきました。さらに、そうした私たちの行為のために生命を育む力を失った土に対して、化学肥料を蒔くということをしてきたのです。生きている土が無くなってしまえば、こうした命のつながりも途絶 えてしまうのです。
 私たち人間はこれまで自らの手で、土とのつながりを絶ち、さらに土の生命を奪ってきたと言えるのかもしれません。


私たちと土の共存
 水が汚れると魚が減り、やがてイルカやクジラが減るように、土が死ぬと植物が減り、それを食べるわたしたちにも影響があるはずです。

 たとえばトマトという野菜が実をつけるために必要な栄養分というのは、すでに科学的に分かっていますから、痩せ細ってほとんど微生物のいない(あるいは農薬によって意識的に小さな生命を絶ってしまった)土でも、化学肥料を使えばちゃんと夏にはトマトの赤い実がなります。しかし、それは決しておいしいトマト(=本当に元気なトマト)ではありません。

 「最近の野菜はおいしくない。味がない。小さなころに食べたトマトは多少不格好でも、もっと甘かった」と父や母がよくいっていました。農薬や化学肥料だけでも、トマトの色や形は整います。でもおいしくない。それは、トマトではなくて、「トマトの形をしたビタミン剤」。野菜や果物を生きものではなく、もの(食べ物、商品)と考えてきたためにでき上がった一つの人工物です。こうしたものを食べていて私たちは本当の元気をもち続けることができるのでしょうか?

 最近、土のもつ力とその大切さを見直し、化学肥料を使わない有機農法に取り組む動きが盛んになってきています。そのおかげで、有機野菜や、有機栽培された穀物などを素材とした商品を扱うお店や、レストランなどもどんどん増えています。
 玄米ごはんなど、最近ではあまり食べなくなったものが意外においしかったりするのですが、普段食べなれているほうれんそうやニンジンなどの野菜を、有機栽培独特の独特の甘さやしっかりした歯応えなどがかえってよくわかるような気がします。
 なかでもニンジンや玉葱、ゴボウといったいわゆる根ものの野菜を食べると、本当に土の匂がするようで、ただ単に茹でてお塩をかけて食べるだけでも、自然のおいしさ、自然の恵みへの感謝を感じます。しかしそこにはさまざまな苦労があります。有機栽培の野菜のおいしさを本当に感じるのなら、やはり育てるという苦労と喜びを知ることが大切なのかもしれません。
 土という自然のもつ力、土の元気を精一杯活かして、そして野菜のもつ元気を精一杯活かしてやる。そしてその恵みを必要な分だけおいしくいただく。
 私たち人間がも っとも自然の恵み、自然とのつながりのなかで生きることへの感謝を感じることができるのは、土を耕し、植物の命を育て、さまざまな苦労をして、土に触れ、その結果として食べ物を得ることができたときなのかもしれません。


土に触れる
 市民農園という形で、一畳ほどの農地を貸し出している町もあります。ベランダにプランターを置き、野菜を育てることもできます。そこまでいかなくても、まず、土に触れて見てください。土とふれあう暮らしは、都会にいても実現します。
 生きている土の温度を感じ、生きている土の匂を吸い込んでみましょう。
 今頃の季節にたくさん土の上を歩き、土ぼこりを吸い込んでおくと、土中の微生物がお腹に入り、夏になってもお腹を壊さないという話もあります。(私たちの腸にも土と同じようにさまざまな微生物や菌がいます。内側のヒダにひっついている無数の微生物や菌と私たちは共存しています。私たちはお腹のなかに土をもっているようなものなのです。)
 イルカやクジラなど、海の生き物にとって水がとても大切なように、私たち人間など陸の生き物にとっては、本当は土がとても大切なものなのです。

 いるかたちは常に海の水と触れながら生きています。海に行き、イルカに会って感じたことを日々の生活に活かすということは、案外、このアスファルトの下にも広々と広がっている、この土とのふれあいを増やすことが一つの鍵になるのかもしれません。

 特集”地球に生きること”テーマ:[太陽(お日様)] []


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