今昔百鬼拾遺 霧之巻
(国立国会図書館所蔵)
石燕曰く
むかし賀茂の大路をおぼろ夜に車のきしる音しけり。出てみれば 異形のもの也。車争の遺恨にや。
解説
京都の賀茂大路では、朧月夜にはどこからともなくギシギシときしる音が して、牛車が現れます。その牛車の正面には巨大な人面が現れるとの ことです。
かつて賀茂大路で、牛車の休憩場や祭見物の場所をめぐって、牛車の 持ち主である貴族の間、お供の者の間で争いがあったようです。その 争いの時の遺恨が妖怪へ変化して、朧車となって現れるともいわれています。