今昔百鬼拾遺 霧之巻
(国立国会図書館所蔵)
石燕曰く
鳥部山の煙たちのぼりて、竜門原上に骨をうづまんとする三昧の 地よりあやしき形の出たれば、くはぜん坊とは名付たるならん。
解説
京都の鳥部山はかつては高級な葬送地で、平安時代には有力な皇族や 貴族が数多く葬られました。10世紀の末頃には高僧たちが焚死往生を 願って、鳥部山でみずから焼死したそうです。しかし、中には極楽へ 行けない僧もいて、その霊が火前坊になったそうです。火前坊は、 鳥部山で、煙や炎に包まれた乞食坊主のような姿をして現れます。