Indonesia
まず、下図のインドネシアの教育制度の表を見て欲しい。
年齢 | 学校の種類 | 教育内容 |
---|---|---|
6から8〜12から14才 | 普通高校・職業高専高校・マドラサ | 普通教育 |
13〜15才 | 普通中学校・職業中学校・マドラサ | 中等教育 |
16〜18才 | 普通高校・職業高専高校・マドラサ | |
19〜22才 | 大学・短期大学(2年) | 高等教育 |
23〜24才 | 大学院 |
つまり、インドネシアでは6才〜8才までの間に入学すれば良い ということになる。ゆえに、クラスが全員同じ年齢の児童で構成 されているとは限らないのである。
また、初等教育を受け持つ機関に、教育文化省の受け持つ小学校の 他に、宗教省の受け持つ「マドラサ」と呼ばれるイスラム教学校が あるという点も特徴的であろう。これは国民の90%近くがイスラム教徒 であるインドネシアならではの制度と言える(注)。このことにより、午前中は 小学校、午後からはマドラサへ、という児童が存在する。
そうしたダブルスクールの児童がいる一方で、特に農村などにおいて、 貧困や親の教育に対する無理解のために、義務教育を受けられない 児童がいることを忘れてはならない。
(注)イスラム教はインドネシアの国境ではないし、またイスラム教だけが 優遇されているということはない。他の宗教もまた尊重される。
インドネシアの中等教育は中学校と高校の2つがあり、これらは共に 3年制である。
中学校へは小学校卒業資格を得て、入学試験に合格することで進学できる。
中学校には普通中学の他に職業中学があり、後者では技術中学や家政中学
などがある。しかし職業中学校の人気は低く、生徒数で両者の比率を見ると
98:2と圧倒的に普通中学が多い。
高校には、中学校と同じく卒業資格を取得してから入学試験に合格することで 進学できる。高校にも普通高校と職業系高校があるが、職業高校は職業中学に 比べて選択の幅が広くなり、技術高校、家政高校などの他に経済高校や教員 養成学校なども含まれる。この時点では普通高校対職業系高校の人数比率は 2:1となっている。
大学に進学するシステムは高校や中学と同じで、学士過程が4年、 修士過程が2年となっている。インドネシアでは大学進学率は 3%程度とかなり低くなっている。
インドネシアは多民族国家である。1億7000万人の国民は、ジャワ・ カリマンタン、ニューギニア、スラウェシ、スマトラと散在し、そこでは 様々なライフスタイルを保持する民族集団が混在している。
当然、そのことは教育にも色濃く現れている。
例えば小学校の「民族闘争史」という科目の教科書の最初にはこう書かれている。
この文はまだまだ続く。そして挿絵としてそれぞれの民族衣装に体を包んだ、 男女一組の子どもが描かれている。この様にして、インドネシアに存在する 民族が全て紹介されていく。
そして最後の言葉として次のような文章で締めくくられる。
また、このことはカリキュラムにも見られる。小学校には国語である インドネシア語や、社会、数学、理科といった科目の他に「地方語」や 「宗教教育」、「民族闘争史」などがある。
「地方語」ではジャワ語などの現地語が教えられる。「宗教教育」では それぞれが信仰する宗教を、「民族闘争史」では独立以来のインドネシアの 歴史を学ぶ。このように、インドネシアにおいては初等教育の時点から 民族の多様性、そしてその共存を学ぶのである。