日本のプロ野球の概況について


日本に野球が伝わったのは

 諸説がある。1871年,キリストの伝導を兼ねて日本に来た米人の英語教師が伝え たというもの。
また,米国の留学から帰国した開成校(東京大学の前身)の牧野伸顕が校庭で披露した のがはじまり,などのいろいろ説があるが,おおよそこの時代であるという。
最初に野球チームが生まれたのは,1878年新橋鉄道局の技師の平岡  氏(ひらお か ひろし)が「新橋クラブ」を結成した。

学生野球から日本の野球は発展していく

 最初に誕生したのは,社会人のクラブ・チームだったが,のちに学生たちの間で広がっ ていく。
1897年ごろには,旧制高校時代の黄金時代を迎える。第一高等学校,第三高等学校 の対抗戦が人気を呼ぶ。
この前後から慶大,早稲田と言った大学チームが台頭し,東京六大学野球の幕開けとな る。

大学野球から中等野球へと全国的な普及へ

 1915年,現在の高校野球の前身である中等学校の全国大会(夏の高校野球)がは じまり,さらに1924年には春の選抜大会がはじまり,全国津々浦々まで広がってい った。
 アメリカから入ってきた野球は,柔道,剣道で育った若者たち,また指導者の中に, 「魂の野球」として受けとめられ,「ベースボール」というよりも「野球道」といった 感じで,人間形成のうえで大きな位置を占める。

楽しんでプレーをするよりも”精神野球”化へ

 アメリカなどの野球と違う形で発展したのは,こうした国民性から来たもの。
現在の高校野球に,こうした背景をみることができる。野球を教育の一環としてみる姿 勢が強い。

偏見の中で生まれた日本のプロ野球

 野球を職業とする動きに対して,社会の中では批判の声が強かった。
野球好きの日本人ながら,野球を職業として生活するとは何事だと。職業野球の結成に 参加しようとする選手たちを肉親も周囲の人たちも白眼視した。

職業野球が誕生したのは1936年

 読売新聞社の正力松太郎氏(故人)が,日本にもアメリカのようにプロ野球をつくろ うと,働きかける。
 読売巨人,阪神,名古屋,阪急,セネタースなどが名乗りをあげる。これらのチーム に加わった選手は,東京六大学野球や高校野球(旧,中等野球)で活躍した選手が多かっ た。

日本とアメリカ野球の交流

 当時,野球の先進国,アメリカの野球を取り入れるため大学野球チーム,高校野球 (旧,中等野球)の優勝チームがアメリカへ遠征。
アメリカからも米大リーグの選抜チームを迎えての親善試合なども活発に行われたが, 技量の差は,やはり否めなかった。
肉体的な条件(パワー,スピード)と技術に大きな差があった。これは現在でも変わら ない。

敗戦後の日本国民の人気を呼んだプロ野球

 敗戦で焼土と化した日本の大都会,その中から復活した日本のプロ野球は,スポーツ の中でも一番人気のある娯楽であった。
当時のプロ野球は1リーグ時代で,巨人,阪神,南海,中日,阪急,セネタースなど8 球団がペナントをかけて争った。
赤バットの川上,青バットの大下といったスラッガーのホームランが少年の夢をはぐく んだ。

現在の2リーグに分かれたのは1950年

 セントラルリーグ,パシフィックリーグと2リーグに分かれたのは1950年。
プロ野球の生みの親と言われた正力松太郎氏の働きかけで,アメリカのようにナショナ ルリーグ,アメリカンリーグなみに2リーグとなる。現在の広島東洋カープも,この2 リーグに分かれたときに誕生した。(当時は広島カープ)
 いまセ・リーグにはヤクルトスワローズ,東京読売巨人軍,阪神タイガース,広島東 洋カープ,横浜ベイスターズ,中日ドラゴンズがあり,パ・リーグには西武ライオンズ, 近鉄バファローズ,オリックス・ブルーウェーブ,福岡ダイエーホークス,日本ハムファ イターズ,千葉ロッテマリーンズがある。
セ・リーグが6球団,パ・リーグが6球団の計12球団。

日本のペナントレースは総当たり制

 セ・パ両リーグも4月の初めに開幕する。26回戦,総当たり制のリーグ戦方式。 自分の球団の本拠地で13試合,相手チームの本拠地で13試合のホームアンドウェー である。
1球団,130試合の勝敗により,優勝を決める。
両リーグの優勝チーム同志が「日本一」を決める日本シリーズが7回戦制で行われる。 アメリカのワールトシリーズと同様。

*シーズン中盤になる7月には,両リーグのファン投票によって選ばれた選手たちが 一堂に集まって,オールスターゲームが行われる。「夢のオールスター」と呼ばれ ており,以前は3試合行われていたが,1989年からは2試合になった。

日本のプロ野球機構は

 コミショナーが最高権威である。1989年から,吉国一郎氏が就任。コミショナー の下にセ・パ両リーグがあり,セの会長は川島廣守氏,パの会長は原野和夫氏。
実行委員会という組繊がある。このメンバーはリーグの会長,全球団の代表役員によっ て構成さており,プロ野球の立法機関である。
 またオーナー会議というものがあり,日本のプロ野球12球団のオーナーによって構 成されるもので,この会議の議長は持ち回り制である。

フランチャイズ制

 アメリカと同様,チームはその本拠地球場の所在する都道府県を保護地域としている。 セ・リーグ,東京読売巨人軍(東京都),広島東洋カープ(広島県),阪神タイガー ス(兵庫県),中日ドラゴンズ(愛知県),ヤクルトスワローズ(東京都),横浜ベ イスターズ(神奈川県)である。

ファームチームにもリーグがある

 日本列島を東西に分けて,イースタンリーグとウエスタンリーグがある。
イースタンリーグは東京に本拠地を置く巨人,日本ハム,ロッテ,ヤクルト,横浜, 西武の6球団。
ウエスタンリーグは,中日,阪神,近鉄,オリックス,ダイエー,広島の6球団。
総当たり制のリーグ戦を行い,そのリーグの勝者(優勝)同士で,ジュニア選手権を 9月に行う。
 またプロ野球オールスターゲームの行われる前日に,ジュニアオールスターゲームも 行われ,ファーム選手の育成をはかる。

新人選手の補強はドラフト会議で

 毎年11月に,来年補強する選手を12球団により,新人選手をリストアップし,指 名が重なった場合はくじで抽選をする。
尚,1993年度より1位・2位については,ドラフト対象者が社会人・大学生に限り希望 球団の逆指名が可能となる。但し,逆指名した上で獲得球団が競合した場合は,従来通 りくじでの抽選,希望球団に指名されなかった場合は,指名された希望以外の球団でも その選手の獲得権がある。又,希望球団の3位以下の指名でも,同様に獲得権はある。

球団同士のトレードでチームの補強

 チームの弱点を補強する場合,新人選手のドラフト会議で選手を指名して交渉,獲得 するほか,チーム同士で選手を交換して補強する。
また,金銭によるトレードの方法もある。
トレードの期限は,6月末までとなっている。

外国人選手の枠は3名,うち2名は登録できる
 外国人選手を獲得してチームを補強する場合は3名まで。そのうち2名が一軍登録選 手として登録できる。

一球団の支配下登録選手は70名,一軍登録選手は40名

日本のプロ野球の観客動員は

 セ・リーグでは1球団の観客は100万人〜350万人。
パ・リーグでは100万人〜210万人,両リーグを合わせて2300万人を越える観 客を動貝できる。

テレビ放送による影響力は大きい

 巨人をはしめセ・リーグのチームはゲームのあるときは,ほとんど全試合テレビ放映さ れる。広島の場合もすべての本拠地での試合を,地元のテレビ局(5局)が放映する。 テレビ放映は,プロ野球の人気をあげ,また社会的にも大きな影響を与えている。

*広島東洋カープでは6年前から,ウエスタンリーグのテレビ放映も行っている。
特にカープは,若い選手の育成を基本理念にしており,こうした意味からもファー ムの選手の活躍ぶりを,テレビを通してファンにみてもらうためである。


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