捜し物はなんですか? |
文:五島直子 |
北京、魏公村の雑踏の中にある小さな店「加藤屋」。
ここでずっと働いてきた中国人の徐愛民君が、もうすぐ日本へと旅立つ。 彼は日本語を勉強し、日本人を相手に言葉の勉強をしようとこの店にやってきた。 そして日本風のサービスを心掛け、いつもニコニコ明るい人気者だった。以前皿洗いとして店に来た小季という女の子は、故郷の安徽省から”開眼”するためにやって来て、また違う場所を求めて出ていった。
なじみのお客さんたちも、帰国を前にしてみんなこの店に顔を出す。 ある人は晴れ晴れとした顔で、ある人は落ち着かない顔で、ある人は切羽詰まった恐い顔で。
ここに来る人たちは、みんな何かを探してる。日本人も、中国人も…。 懐しい日本の味だったり、日本語での会話だったり、友達だったり、情報だったり、仕事だったり、はたまた夢だったり…
そんな私も、最初にこの店に来たのは、新しい友達を探しに、だったな。 ここで知り合った仲間とここで待ち合わせて飲みながらいろんなことを語る。 それが楽しくて、いつの間にかいりびたるようになってしまった。
私がここで見つけたのは、おもしろくって尊敬すべき仲間達。 のれんをくぐるといつも知った顔に逢える。 彼らとの会話の中にはいろんなものが落ちていて、そこから見つけだせるものってたくさんある。 そしてそれをヒントにまた新しいことをはじめる。
そういえば、ある友人が「ここで旅の情報交換をしたい」なんて言ってたなあ。 いろんな旅の話や感想、なんでもここに貼り出して、みんなそれを参考にして、また旅に出る。そんな旅行ガイドのある店にしたいねって。
ここは長い長い”自分探しの旅”の途中で立ち寄る店。 ここで出会って、何かを見つけて、また一人一人旅立って行く…。
北京のはきだめのような雑踏のなかにポツンとある小さな店、へたすると見落としそうなこの店を皆さんも覗いてみませんか?
何が見つかるかはわかりません。 でも、もしかしたらイイコトあるかもしれないよ。
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