たとえば美術品なら、単に展示されているだけじゃ面白くない。それらが動き出せば、芸術はもっと身近で、もっと楽しくなるはずだ。そう思っていた頃に「年中行事絵巻」や「鳥獣戯画」を見る機会があったんだが、そこに描かれている動物や何やが動き出したんだ。というふうに僕には見えた。何世紀も冬眠していたのが、今、起き出したように生き生きとね。だから、昔にすたれてしまった芸能も想像の世界で終わるんじゃなく、実際に目の前で演じているのが見られたらどんなに楽しいだろうと……。そんなことがきっかけで「楽劇」の形が自分の中で具体化していった。 もともと古典の家に生まれたせいか、堅苦しさが嫌だった。もっともらしいことが嫌いで10代はアングラ芝居をやっていたし、20代は公演で海外ばかり行っていた。でも、そうして離れて日本を見ることで、東洋は素晴らしいということに気が付いたんだ。湿気があるのも、四季があるのもいい。今じゃ海外へ行っても一日一杯の味噌汁は必需品(笑い)。だから、世界に誇りうる東洋をモチーフにした全く新しい、そして楽しい劇を創りたい、そんな想いもあります。 |