新たな台本づくり
安土桃山時代の「天正狂言本」に書かれていた、わずか10行のストーリーをもとに、台本考証チームを結成して本来の『唐人相撲』の姿を探りました。狂言の各流儀に残されている台本や野村家の台本を底本として演出方法を比較対照し、半年をかけて統一、新しい台本を創作しました。



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デタラメ中国語の唐音(とういん)
日本人相撲取りと通辞以外は、唐音というデタラメ中国語を話します。伝わる台本の唐音はバラバラだったので、それらを整理・統一した上で、中国語として通じる言葉を補っていきました。歌詞に用いた唐音は、チン・プン・カン・プンなどの言葉を脚韻のように織り込んでいますが、これも北京大学出身の中国人に依頼して創作したホンモノの中国語による歌詞です。


アクロバティックな相撲
相撲の取り組みの型には、コブシ投げ、杉立ち、松葉返し、吹き散りに、二十数人がつながって動く総掛かり百足(むかで)など十通りあり、視覚的効果の大きいアクロバティックな要素もふんだんに盛り込んでいます。


 
すべて一新した装束
豊臣秀吉が狂言『唐人相撲』のために作らせた非常に贅沢な装束が、重要文化財に指定されている徳川美術館所蔵のもの。これらやカルサン(唐人の装束)の資料、中国の服装史を参考に、オリジナルの装束を作りました。




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音楽と中国の楽器
作曲は野村万之丞と一噌流笛方の一噌幸弘による共作です。万之丞が考証した内容を細かく指定し、それを受けた一噌が旋律を創り、その旋律に合わせてアレンジする、という作業が繰り返されました。役者が奏者も兼ね、音楽家も役者として演じながら奏でる楽器は、狂言の四拍子(笛・小鼓・大鼓・太鼓)に加え、中国から取り寄せた腰鼓(くれつづみ)、銅拍子、鐃釵(にゅうばち)、銅鑼(どら)、喇叭(らっぱ)などを使用しています。

外国人(中国人)とのコラボレーション
相撲のシーンには、柱によじ登ったり、欄干を前転で飛び越えたり、バック転をしたりとアクロバティックな演出が盛り込まれています。中国の京劇俳優を起用することで実現したシーンですが、意思の疎通や立ち居振る舞いの指導などにも、多くの時間が費やされました。