画図百鬼夜行 陰之巻

(国立国会図書館所蔵)

解説 かまいたちは、漢字で書くと「鎌鼬」が普通であり、石燕の絵においても、 鼬を元にしたイメージで描かれています。だいたいは旋風のお化けで、 出会うと、鋭い鎌で切ったような切り口の傷ができますが、 痛みも出血もみられません。
命にまでかかわることはあまりないのですが、生血を吸うといわれている 地方もあります。また、岐阜や長野の方では、三人組(三匹組?)で 現われます。最初が人を倒し、二番目が切りつけ、最後が薬をつけていく といわれています。暦を踏むと出会うという話や、古暦の黒焼きで傷が 早く治るという話も伝えられていて、何か暦と関係があるのでしょうか? 旋風ということで、出現時期が限られていたせいかもしれません。
ところで、画の中であてられている漢字は「窮奇」です。かまいたちの ことを窮奇と当てることもあるのですが、窮奇は中国の「左伝」や 「山海経」にみられる妖怪です。はりねずみの毛をもち、手足の鈎爪で 人を殺す妖怪で、鎌鼬よりはずいぶん凶暴なようです。あまり同じ妖怪には みえないのですが、どのような経緯で「窮奇」=「かまいたち」に なったのでしょうか?