「舟歌」シリーズ
Barcarole
暑い夏には、「舟歌」でも聞きながら涼んでいただきたいと思い、演奏してみました。
やはりショパンの後期の名作である「舟歌」が、一番すばらしい曲でしょうね。
- メンデルスゾーン
ベニスのゴンドラの歌 第1番, op.19-6 (9k)
- メンデルスゾーン
ベニスのゴンドラの歌 第2番 , op.30-6 (9k)
- メンデルスゾーン
ベニスのゴンドラの歌 第3番, op.62-5 (9k)
- ショパン
舟歌, op.60 (43k)
- フォーレ
舟歌 第1番, op.26(17k)
- チャイコフスキー
舟歌, op.37a-6(17k)
- ラフマニノフ
舟歌, op.10-3 (26k)
演奏 小栗 克裕 (Play by Katsuhiro Oguri )
(リアルタイムMIDI録音)
メンデルスゾーンの「無言歌集」は、ロマン派初期のピアノピースの草分け的存在です。その中で唯一3曲の同名の曲が、このベニスのゴンドラの歌ですが、実際、曲名は本人のつけたものはほとんどないそうなので、このベニスのゴンドラの歌は、彼のあこがれと思い出を綴ったものだと考えられます。3曲とも実に寂しい曲想ですが、私がもう10年も前に行った秋のベニスの情景を思い起こさせます。夏は南国のきらびやかなベニスも、秋をむかえると人気もなく、一人で1週間もそこに滞在した時は、実に寂しい町だったと記憶してます。それが私の2ヶ月半にも及ぶヨーロッパ滞在の最後の1週間だったのですが、初めてホームシックにかかってしまったことを思い出します。そういった気分で演奏してみました。
ショパンの「舟歌」は、死の3年前に作曲されたピアノ曲としては最後の大作です。同じ年には「幻想」ポロネーズやチェロソナタも作曲されてます。ジョルジュ・サンドとの恋もすでに終わりに近づき、秋にはひとりでパリに帰ってしまってます。病弱であった彼が、最後に元気を取り戻した時の作品ですが、ピアノソナタ3番に見られたような情熱的なあふれるような楽想は影をひそめ、穏やかな温かい作品に仕上がっています。
フォーレの「舟歌」は、全部で13曲ありますが、1番はフォーレらしい入り組んだ伴奏形の内声にもの悲しい旋律が流れます。中間部は幾分明るくなりますが、ちょっと旋律の作り方が単純すぎて、音楽作りがしにくいと、演奏して感じました。しかし、初期の作品と言うことで仕方のないことかもしれませんし、むしろ中期から後期の難解な和声進行よりも素直な作品となってます。
チャイコフスキーの「四季」は、一年の12ヶ月をそれぞれの季節にインスピレーションを得て作曲されてます。6月は物悲しい「舟歌」となっていますが、多くの「舟歌」が6/8で書かれているのに対し、この曲は4/4で書かれています。いかにもチャイコフスキーらしい旋律によって、哀愁がただよい、「四季」の中でももっとも良く聞かれる曲です。
ラフマニノフの初期のピアノ曲の中に、この舟歌がありますが、初期と言うこともあって、ラフマニノフの華麗なビルトーゾはこの作品にはありません。和声的にも単純ですが、曲の最後の部分の半音進行のみが、その後のラフマニノフを予感させるものとなっています。
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