第4回国際イルカ・クジラ会議江ノ島フォーラム
プレゼンテーション


ENOSIMA

「ガイア―イルカ・クジラとの関係」/「意識の変化」

ピーター・ラッセル(Peter Russell)

(サイエンス・ジャーナリスト)

1946年生まれ。ケンブリッジ大学で、理論物理学、心理学、コンピュターサイエンスなどを学ぶ。インドで瞑想と東洋哲学を学んだあと、プリストル大学で瞑想の心理を研究してから、人間の意識の可能性を探求し、東洋と西洋の「心」の理解を統合することを重要視してきた。現在は各地で講演やワークショップを行い、ラジオやテレビにもたびたび出演し、多くの新聞や雑誌でも特集されている。一方、彼はある考えをより多くの人々に伝えることができるビジュアル・メディアの価値を認め、「グローバル・ブレイン」のマルチ・メディア・スライドを作り、自分の講演などで使っている。これは、スウェーデンの国際オーディオ・ビジュアル・フェスティバルで金メダルとグランプリを受賞した。主著に「グローバル・ブレイン」(工作舎)、「ホワイトホール・イン・タイム」(地湧社)がある。


「ガイア―イルカ・クジラとの関係」・「意識の変化」

 江ノ島フォーラムのメインテーマは、「ガイアから宇宙へ〜みんなひとつ」。自然と調和して生きているイルカ・クジラを道先案内人として、人間も自然や宇宙の一部であることを思い出し、温かさと優しさに満ちたよりよい未来を模索していこうというものである。プレゼンテーターのジャンルが科学者から海洋生物学者、写真家、メディア・クリエーターなど多岐にわたっているのも、会議のチケットがバラ売りではなく3日間通しのみに限られたのも、すべてこのテーマ「みんなひとつにつながっているんだね」を、肌で実感してもらいたいという主旨による。そして、このメインテーマをよりわかりやすくレクチャーしてくれたのが、会議の最初と最後に登場したピーター・ラッセルのプレゼンテーションだった。
 プレゼンテーション1では、みずから制作したマルチ・メディア・スライド「グローバル・ブレイン」をテキストに、ガイアと人間とのかかわりからひもといていった。高度なテクノロジーの濫用によって環境破壊をもたらし、地球のガン細胞ともたとえられる人間。しかし、その人間も、もともと自然の一部なのである。忘れかけていたガイアとの調和を思い出し、1人1人が調和に満ちた生き方を実践すれば、人類はより大きな地球規模のシステム「グローバル・ブレイン」へと素晴らしい進化を遂げるだろうと、期待をこめて力説した。「グローバル・ブレイン」とは全地球的意識、つまり、数十億の細胞が統合されてほ乳類という大きな生命体を構成しているように、人間1人1人がより大きな1つの生命体を構成する細胞的な存在として、地球規模の視野を持ち、さらなる進化に向かうという考え方である。
 プレゼンテーション15では、われわれ人間が文明を発展させるのに不可欠な2つの要素、「言葉」と「手」を取り上げ、その有能さゆえに見失ってきたたいせつなことを明らかにしていった。人間は「言葉」があることによって言葉以外のコミュニケーション方法があることを忘れがちであり、さまざまなものを創造する「手」によって、自然や世界さえも造り変えることができると錯覚してきた。しかし、だからといってこの2つを捨てろというわけではない。現代テクノロジーのすばらしさと他の生き物たちの持っている(実は我々人間も本来持っていて忘れているだけなのだが)知恵を合体させ、バランスをとっていくことが、今後の重要な課題なのである。それを実現する大きなカギは、人間1人1人の心の内側にあると、彼は言う。我々の心を制約する恐怖心を取り除き、あるがままを受け入れて刻々の現在を楽しんで生きること。そして大きな思いやりの愛を持つこと。これらのことを実践すれば、人間も環境と調和し、お互いに愛しあって平和な社会を築くことができる。イルカやクジラがその精神的な師となってくれるだろう、と。
 こうして会議も最後に近づくにつれ、流れは最初に戻っていく。一連のプレゼンテーションが1つの大きな円環を構成している今回の会議は、ピーター・ラッセルの言う「グローバル・ブレイン」の1つのひな型であろう。ひな型さえできれば理想とする世界は容易にイメージでき、イメージさえできればそれはすでにもう実現しているのと同じことなのだ。エンディングとなった<アイサーチ・ジャパン>のプレゼンテーションは、そんなイメージを表現した象徴的な作品だった。


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