第4回国際イルカ・クジラ会議江ノ島フォーラム
プレゼンテーション


ENOSIMA

「“新しい夜明け”
―私たち人類は彼らの言葉に耳を傾けることができるか?」

ポール・フォレステル(Paul Forestell)

(パシフィック・ホエール・ファンデーション研究教育部長)

海洋パシフィック・ホエール財団の研究部部長。同財団では、海洋哺乳類とその環境について、科学的視点から一般を対象に教育する目的で設立された。博士は、海洋リサーチと教育プログラムの企画、実行を担当。彼の研究は 「ナショナル・ジオ・グラフィック探査」 というテレビシリーズで放映され、日本のテレビドキュメンタリーでもザトウクジラの研究が放映されている。最近の研究テーマは「ザトウクジラの地域調査、母子の回遊性、一般人の海洋環境に対する関心」 など。彼は海洋資源に関する理解と保護を目指し、旅行業者、環境科学者、教育者、一般人の代表者が集まって、生産的協力体制を作ることを提案している。


「“新しい夜明け”―私たち人類は彼らの言葉に耳を傾けることができるか?」

 世界じゅうの神話や伝説には、人間が他の種と会話するという話が、万国共通して描かれている。
 これは昔、人間が他の種と会話する能力を持っていたこと、そしてまた、会話したいと歴史的にずっと期待し続けてきたことを示唆しているのではないだろうか。
 ポール・フォレステル博士は、モーゼの予言者の予言者の時代、高僧が金に目がくらんでロバの語りかけが聞こえなくなり、神の怒りにふれるという昔話や、博士自身がイルカに水泳を習った経験な どを例にとりながら、異種間のコミュニケーションの可能性について語り、我々人類はそこから何を学ぶべきか説き明かしてくれた。
 他の種とコミュニケーションを考えるにあたって、まず私たちは次の事柄を自覚しておかなくてはならない。
 第一に、人間は他の種よりも、周りの環境に何が起こっているか、わかっていないということ。第二に、会話のためには、他の種が人間の言葉を話す必要があること(共通の経験をもとにしか会話は なりたたない)。そして第三に、動物は日々のことについて話しているということ(崇高な会話をしているわけでわない)。
 「種にはそれぞれ質的に違った制約があり、他の種とコミュニケーションには明らかな『限界』があるとおもいます。しかし、他の種から情報を入手することはじゅうぶん可能です。」
 たとえば、インディアンのトーテムや東洋の干支などのように、動物の特徴をシンボル化して情報を取り込むことも一つの方法であるし、また動物の生態や分布を研究・調査することによって、他の種が世界をどう認識しているのか知ることも重要だ。
 また、手話を使ってイルカと対話する試み(ハワイ大学、ドルフィン・ランゲージ・トレーニング)など、シンボルを応用することにより双方向コミュニケーションを行うことには、さまざまな可能性がある。
 「他の種とのコミュニケーションを可能にするためには、私たちはいい『聞き役』にならなくてはなりません。彼らは私たちの存在がゆえに地球が傷ついているという現状を目の前にしています。この叫びを私たちは聞かなくてはなりません。他の動物に対する知識や理解を深め、双方向コミュニケーションへの努力を惜しんではならないのです。」  科学技術の優位性に捕らわれ、エコシステムを見失ってしまったがゆえに、困惑の道をたどっている人類。
 フォレステル博士は、他の種とコミュニケーションによって彼らが、宇宙の秘密を説き明かし、ぎりぎりのところで私たちを救ってくれるのではないか、と期待をこめて語る。  「ジェームズ・ラブロックの『ガイア仮説』は、人類に大きなチャレンジを与えています。他の種とのコミュニケーションは、共生・進化について、切って切れない重要な問題があり、この惑星で人間だけがこのチャレンジに積極的に参加できるのです。」
 惑星にはさまざまな種がいるが、その中にはイルカやクジラのように人間とのコミュニケートを喜ぶ種がある。
 彼らと対話をするのは、なにも科学者や専門家だけではない。一般の人々が彼らと体験的に彼らと触れ合うことは、実感的な情報を蓄積する意味でも、重要なことなのだ。
 1人1人の体験が、人類の発展に少なからず影響を与えていく。
 「すべての生命体に対する敬意を蓄積することで、ガイアの子孫である私たち、そして地球を創設した偉大なチカラとの重要なリンク(つながり)を釈明することができるのです」 と、博士はフィー ルドに出ることの重要性を強調して、プレゼンテーションを終えた。


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