8.お下劣君登場
今日の国家財政を普通に考えれば、
もう福祉大国路線は、無理なわけである。

五十六十の人々はいい。
我々の世代は(私は二十代)、
どうせ年金ももらえないのである。
気の遠くなるような国の借金を、
返しつづけなければいけないのである。
我々の一生が借金返済に終わるのは、
まだいい。
下手をすると我々の子供たちの人生まで、
危ないのである。

今威張っている人々は、
私に言わせれば、
単なる我利我利亡者である。
おのれたちがいい思いをするために、
赤字公債をガシャガシャすって、
自分たちは、返済しない。
返済するのは、我々である。
下手をすると、
我々の子どもである。

こんな気持ちになっている我々の世代に、
常識的な意見を吐けという方が無理であろう。
そういうわけで、私は暴論を吐く。

大体いくら医療が発達しても、
人間は必ず死ぬのである。
どうしてそこまでして、生き続けようとするのか。
死にかけているということは、
死んだも同然なのである。

だったらもう、ライン上の患者は、
死なせてしまって構わないではないか。
中途半端に生き延びさせるから、
周りが世話するのに苦労する。
こういう事を言うと非難されるのはわかっているが、
生きていていてもしょうがない人々というのも、
あるのである。

重度の病気ならば、とどめをさして上げるのも、
人の道ではないか。

もちろん子どもは違う。
子どもには、未来がある。
だから少々無理をしてでも、
助けたほうが良い。

しかしながら、老人には、未来はほとんどないのである。
六十歳の老人が寝たきりになった。
どれだけ生きても、まあ三十年である。
そしてその間、ずーっと寝たきりである。
言っては何だが、それはもう、死人なのである。

立花某とかいう偽善者が、
「脳死患者を死んだとみなしてはいけない」
と、戯言を抜かしている。

脳死患者は、植物人間よりも、
脳の活動が、少ないのである。
もしかりに脳死の人間を殺してはいけないとなったら、
植物人間は尚のこと殺せないではないか。

しかし、断固として言おう、植物人間は、殺すべきである。
植物状態を死んだことにして、
臓器移植をすればいい。

「なんて非人道的な」
と顔をしかめたあなた、
大変結構な道徳観でございますねえ。
しかし後二、三十年もすれば、
あなたの考えも変わりますぜ。
あなたの子供たちは、
キチンとお米を食って行けるんですかねえ。
江戸時代のことを思い出してくださいよ。
東北地方は、飢饉続きで、食べるものがなくて、
娘を交換して食っていたんですから。
もしかりに、石油がストップすれば、またあのころに逆戻りですぜ。

今じゃ農業にも石油は欠かせませんから、
人口も増えていることだし、
あのころより悲惨なことになるかもしれませんねえ。
あなたの娘さんやお孫さんが、
だべられちまわなきゃ良いんですけどねえ。

「石油がストップすることなんてない」

へーそうですか。
じゃあお聞きしますが、太平洋戦争はどうして始まったんですかい。
どうして日本は、真珠湾を奇襲しなくちゃいけなかったんですかい。
石油を止められたからじゃあ、ないんですかい。

「アメリカと仲良くしとけば、大丈夫だ」

そんな単純に考えられちゃあ、参っちゃいますよ。
いいですかい。今地球資源のほとんどは、
先進国で使っていますよねえ。
ところが発展途上国だって、
我々みたいに、豊かになりたいんですよ。
そりゃ同じ人間ですもの。
だけどここに問題があるんですよ。
中国とインドの人口をあわせて、
まあ二十億と見ますよねえ。
彼らが我々とおんなじ様に、
石油やら鉄鉱石やらを使い出しますよねえ。
ところが残念なことに、
地球ってやつは、大きくなんないんですよ。
要するに、使える鉄鉱石も石油も、
限りがあるんですよ。
無い袖はあなた、振れないでしょう。

「だから、省資源、省エネルギーの研究をすれば良いんだ」

へっへっへっ、大変結構なことで。
そりゃ今の日本人にはできるでしょうよ。
競争力もあるし、技術もあるし。
だけど、中国とかインドとかに、できますかねえ。
正直彼らのモラルなんて、なきに等しいんですからねえ。
中国東北地方の工場に、一応塵肺除去装置付けたみたいなんですが、
彼らは、電気代が余分にかかるってんで、
スイッチ切っちゃうんですよ。
おかげで日本にもぼちぼち、酸性雨が来だしましてねえ。
そのうちヨーロッパみたいになるんですかねえ。

ヨーロッパは大陸だから、
酸性雨が来ても、木が枯れるだけでしょう。
だけど日本は、山ばっかりの国ですからねえ。
木が枯れちゃうと、保水能力がなくなって、
バングラディッシュみたいな、
洪水王国になっちゃいますよ。
列島がなくなっちゃうかも知れませんねえ。

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