中国新聞・天風録(平成6年6月23日木曜日)より

「ヒッポ」という名のグループが、広島にある。その名も変わっているが、 おやりになっていることがまた一味違う。自然体で、いい換えれば楽しみながら、 いくつかの外国語を身につけようというのだ。

もう一ついい換えると、ゲーム感覚でやる。おとといの夜、佐伯区民文化センター で開かれたグループの会合が、まさにそうだった。この日が初参加という子連れの 夫婦を交えて、少し古い人、少し新しい人たちが、外国語入りの曲に合わせて動き、 踊り、話す。

この日の会合を「動」とすれば、日ごろは「静」といえる。家ではラジオ感覚でテ ープを聞いている。ご飯の支度をしながら聞いている。むろんただのテープではない。 さまざまな外国語が、生活ことばで飛び交うのだ。日本語に英語が答える。マレー 語が入る。

主宰者の神川孝紀さんはおっしゃる。多様性のもつ計り知れない活力。仮に二つの ことばしかないとすれば、どちらかが負ける。たくさんあれば、そのどれもが生き てゆく。会の名「ヒッポ」の頭に「多言語学習グループ」がかぶせてあるゆえんだ。

多様性に合わせて、双方向を活動の特徴としている。聞いて答える。テープで聞い たら、会って確かめる。韓国の人が来ればハングルで、中央アジアならロシア語で。 そこに人間がいてこそ初めてテープのことばが生きる。

「ヒッポ」の名は、動物カバに由来するという。白樺湖畔でうぶの声を上げたから。 あれから11年たって、今秋のアジア大会に延べ2000余人のボランティアを送り 込む。計り知れないそのエネルギー。