BEATMAKS (vol.14/SEP. 20. 1986) p14-p16
山善の爆発
制御ミス、冷却水沸騰……そして地獄の炉心融解が始まった。山善放射能の恐怖が今、博多ロック・シーンを襲う!?
一昨年の8月のJumpin` Jamで突然甦った博多の狂気"山善"こと山部善次郎がLPのレコーディングを期に異常興奮状態に突入し制御不能。 このニュースが当編集部に伝わった時にスタッフは一瞬我が耳を疑った!? 7/12にフチガミ・レコーディング・スタジオへ録音風景を 取材に行った時は別に異常な素振りは見えなかった。多少興奮気味ではあったが、これは彼のLP制作に打ち込む姿としては当然の事で制御不能状態 という言葉とは程遠いものであった。良い意味での彼の音楽制作に対する集中力の現れと言ってもよい。 以下のレコーディング・レポートを見ていただければ一目瞭然なのである。


●中野茂樹
元野多目ジャグバンド、現在は博多仲良し会ブルースバンドのハープ担当。"3歩さがって撃て!"や"ONE MORE TIME"に参加している。
「山善とは高校時代からの知り合いで昭和(チューリップや甲斐バンドを生んだ伝説のライブ・ハウス)に出ていたようだ。当時から 奇怪な行動が目立っていたが、近年にない骨のあるロックをやっていると思う。期待しています。博多仲良し会ブルース全員で暖かく見守っています。」
●津和野勝好
ブロークダウンエンジンというバンドで田舎者と同じ時期に活動していた。九大のコンサートや箱崎祭などに出演した事がある。 今回のレコーディングでは"3歩さがって撃て"や"誰かが邪魔している"にギターで参加している。
「今日までよくやってきたと思う。今は機材の発達でバンドのノリ自体が違うけれども、やっぱりライブになったら一発で決るバンドがいて欲しい。今は山善しかいない。」
●坂東嘉秀
「とにかく面白い。びしゃり!やし、期待して下さい。」
●角野一人
「もう、何か、あれやね。もの凄いというか、近年お目にかかれんかったような音が聴けるよ。発売日を期待して待っといて。」
●穴井仁吉
ご存知、ミッド・ナイト・スペシャルのベースマン。
「レコーディングのリハーサルをしなかったのでセッションの中で一番エモーショナルでスリリングなレコーディングでした。」
●柏木省三
今回のレコーディングのプロデューサー
「山部こそ、博多だけじゃなく日本で最後のストリート・ロッカーだ。このレコードは究極のR&Rアルバムになる。とにかくボーカリストとしての 山部の質が類を見ない。もう買うしかないっ!」
●山部善次郎
「ラストチャンス! この1枚に全てを賭けます。」

という事で昔からの仲間の好サポートで演奏部分の録音は殆ど終了し後は歌入れをしてミックス・ダウンという事になっていたが山善の突然の 暴走により録音は停止状態。本誌〆切の段階では歓声のメドはついていない。
 思い起せば84年夏にイキナリ復活しHey Hey Stopの録音後、Jumpin` Jamで大暴れ(「山善の逆襲」参照)。同年11月には新宿ロフトに 乗り込んでバカうけ。翌85年1月26日に福岡ビブレホールを超満員にしたソロコン(何と340名以上を動員記録!!)後、パーマネント・グループ として第1期ミッド・ナイト・スペシャル結成(坂東嘉秀、石橋三喜彦、穴井仁吉、池畑潤二という超強力メンツの史上最強のR&Rバンド!!)。 ロッカーズで御馴染みの名曲「キャデラック」の7inch発売したあたりまで快調だった。さあこの調子で大好きな夏場に向けて行くぞォ!! と 盛り上がるハズだったのだが、ゼロ・スペクターと二股かけていた池畑の脱退、そしてマネージメントの不手際等にイヤ気がさした石橋の脱退 など不幸が重なって山善もこれまでか…と思われたがドッコイ殺されても死なない伝説の石投げ男山部善次郎はこの程度のトラブルではビクともしなかった。 池畑の後任ドラマーはドリル時代の旧友、角野一人に決定。ギターの方も中学からのクサレ縁の坂東は健在なわけだから自分もギターを弾く事にして解決。 マア多少問題が無い事も無いが、この様な経過をへて起死回生のLP制作へ突入したのである。必殺山笠男の山善が7/1〜15の伝統の博多祇園山笠期間中に録音!?  という情報を入手した時に一抹の不安を感じない事もなかったがコレも山善のLP制作に賭ける意気込みの現れと軽く考えていたのが甘かったのだろう……。 ここ1年間あまり不気味ともいえる程クールに活動していた山善の体内には彼本来の音楽に対する狂気のエネルギーが密かに蓄積され続けていたのだ。関係者が 油断しているスキに臨海温度ギリギリまでに上昇していたエネルギーがスタジオ内における某氏の不注意な発言を引金に一挙に噴出し制御不能状態へと陥ったらしい…。 7/22小倉厚生年金会館ではリハーサルから大荒れで主催者はビビッてしまうわ、共演のバンドのギタリストめがけてイスは投げるわで大暴れ。 その後も連日の様に福岡市内の音楽関係事務所へ押しかけハンド・マイクで喚き散らしたり走り回ったり大騒ぎ。幸運にも当編集部にはマダ出没していないが某社では 毎日の様に出没して仕事にならない状態とか…。先日8/2に行われたJumpin` Jamでの大爆発が心配されたが当日はリハーサルでギターを1本叩き壊したくらいで事無きを 得て関係者一同胸をなでおろしたが…。いづれにしても完成目前のLPはどうなるのか? 爆発する山善の炉心融解を阻止出来る方策は存在するのか?  予断を許さぬ山善放射能の恐怖に博多ロック・シーンは滅亡の危機に瀕している。

山部善次郎のワンポイントレッスン(全曲解説)


1. ONE MORE TIME
作詞・作曲とも山善。男と女のSEXをあからさまに、かつ、リアルに表現したラブ・ソング。

2. On yeah all right
これも作詞・作曲山善。夜の盛り場にたむろするスケコマシ野郎の讃美歌。

3. 誰かが邪魔している
同じく作詞・作曲山善。何をやってもついていない男の歌。

4. 3歩さがって撃て
作詞・作曲は山善。いわゆるプロテストソングとでも言おうか。腐ったお前に一言…。

5. 気まぐれな雨
作詞は山部江里さん。作曲は山善。アレンジはミッド・ナイト・スペシャルの名ギター坂東嘉秀。ラブ・ソングです。

6. 色あせた恋
せつなく、むせび泣く男と女の物語。作詞は山善、作曲はドリル時代の盟友、井上克之。 井上は山善とは警固中学時代の同級生(そう言えば、ミッド・ナイト・スペシャルの坂東や角野もそうだ) で、山善&フレンズのベーシストとして新宿ロフトに出演した事がある。

7. MIDNIGHT SPECIAL恋
作詞は山善。作曲は昭和時代野多目ジャグバンドのギターとして活躍していた久保さん。 現在は博多仲良し会ブルース・バンド(ブレイク・ダウンのブルー・ヘブンも目じゃないぜ)のベースを弾いている。 この曲は山善&ミッド・ナイト・スペシャルのテーマだ。いわば俺達の歌、そして君等へのメッセージ。




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