【BERO】 サンハウスの活動を含めると15年たったわけですね…。鮎川さんは常々ロックンロールし続けるとおっしゃってますけど、
15年の間、まったく同じ気持ちでやってこられたのではないと思うんですよね。
表面的、内面的に変化はありましたか?
【鮎川】 そぉーやねぇ。あの…、ウェーブみたいなもんだから。変化したとかどうとか、ポイントで「あーだ」「こーだ」考えないタイプですね。
あのー、もっと、いいかげんに考えてる。今からもやっていけるかどうか、先のことはわからねぇ…ぐらいの感じです。
もともとロケットだって1回こっきりで面白がってやって、面白かったからもう1回やりたいなぁ…が、味しめてもっとやりたくなって。
気がついたら、まだやってて。その程度で、あの、わりと後のことに関しては楽観的ですね。
アイデアもどんどんわくし、シーナの声もどんどん冴えてくるし、僕の体力もどんどんついてくるし。
12年前にシナロケを作ったときは30歳を迎えて、体力が続くやろうかとか、2時間のショーを汗みどろでやれるやろうかとか心配で、
栄養剤飲んでみたり、取り越し苦労をしていたけれども、何か心と身体が自然に一番好きなことやっとるちゅうことがわかってるみたいやね。
すると、なんぼでもできるわけ。でも、マラソンとかだめだし(笑)、水泳しろち言うても10mも泳げんかもしれんけど、
ギターを弾いて歌ってシナロケでプレイする分はOKやし。スタジオとかでは6時間くらいぶっとおしで演奏してるときもあるし、なんぼでも音楽は作れるちゅう感じ。
だからスポーツとはちょっと違うね。メンタルな部分が体力を引っ張っていくプラスαがあるのかな、ロックンロールミュージックには。
【シーナ】 でもスポーツと似てるとこもあるのよね。たとえば短距離を走ってるときって景色なんか見えてないんだけど意識はハッキリあって、
障害物なんかはわかるよね。まるで盲目になってるわけじゃない。ちゃんと見えてるんだけど頭はカラッポで走ってるでしょ。
走ってるときの精神状態は、多分演奏してるときに感じるものと似てると思うのね。そのときに冴えてるアンテナみたいなものが。
【BERO】 多分、日常とステージっていうのは精神状態はかなり違うでしょうね。普段からは考えられないパワーが発揮できたり、日常とは一線を引いたエネルギーを発散できてしまうのが
ステージなんでしょうね。
ところで、音楽活動面で、どんなものから影響を受けますか?
【鮎川】 極端に言えば、まわりで起こってること全てに影響受けてる。…それじゃぁ、答えにならんやろ(笑)。
でも、ほんと、そうです。たとえば音楽シーンに限らず、皆が興味を持ってるテーマ、原発問題とか環境問題とか地球レベルでみんなが心配しだした、
そういうことをロックの歌にするバンドがたくさん出てきたとか、そういうことを含めて…全部。
それからROLLING STONESが8年ぶりにいい音出して2時間のステージを毎晩、…毎晩ちゅうことはないけど(笑)、9月から月に10何本平均で働いてる。
WHOもやりだしたこととか、ウィルコジョンソンが来週博多に来ることとか、そういうものも僕らにとっては刺激だし。
それから学校のことも、生協のことも(笑)、八百屋さんのことも全部、なんでもです。
【シーナ】 うん、やっぱり全てに自然と影響受けるでしょうね。
しかも影響を受けたっていうのを自分自身気付かなかったり、気付いたりいろいろでしょうね。
そういえば、ガツンと私に影響を与えてくれたんじゃないかなっていうことが1回あったわ。ずっと前のニューヒッピーズのLPの中にスウィートインスピレーションって曲があるのね。あれ、最初に詞だけ見たときにね、
「嫌だわ」と思ったわけ。意味がないと思ったの。でも、曲がついたら言葉が飛び出してきたのね。私に関係あると思ったの。
その曲ができたときにイメージがパッと浮かんだの。東洋的な女の兵士が土の上に顔を伏せて泥塗れで振り乱して戦ってるときにさ、
瞬間的に夢を見るの。あたりまえの夢を。贅沢でもなんでもない、普通の生活を思い浮かべた兵士。そんな女の兵士が浮かんだときに、
この曲は私に関係あると思ったの。私もそんな夢が欲しいと思ったのね。もちろんヘンテコな特別の毎日も面白いけど基本的な幸せみたいな人間らしさに、
あ、これだなって思ったの。多分、その後の私は変わったと思うわ。だからインスピレーション受けるときってあるんだなって常に思ってる。
【BERO】 突然ですが、最近マスコミで某ママドルが女性の代表みたいに祭り上げられていますが(笑)、
そういうの見てると私としては不満というか…。子供を持って働く女性の代表ということで、若い女性がカッコイイって
憧れているようですが、「あんたらシーナを知らないの」って…。「ここに、もっとカッコイイ女性がいるよ」って。
そういえば夫婦ともに有名人で、子供がいて、働いててというように、二人は似てるんですが、受ける印象は全然違うんですよね。
多分、二人の差は、自然体であるかどうかに出てるのではないでしょうか。シーナは女兵士でありながら自然体なんです。
【シーナ】 (テレ笑)。とにかく頑張りたい。子供のことでも頑張りたい。PTAに行ってもバンバン意見言うし、
間違ってるなと思ったら、年上のお母さんにだって。
【BERO】 PTAにもいかれるんですね(驚)。
【シーナ】 もちろん。行って自分の意見を言うわよ。「もっと叱ったら」って。「うちは叱ってます」って。
【BERO】 叱るのって難しいですからね。
【シーナ】 そうね。だから叱れない人が多いのよ。だから変な関係になるでしょ。フラストレーションもたまってくるでしょうし。
間違ってるなと思ったら叱らなくっちゃ。私は、子供にも自然体でいたいの。
【BERO】 素敵な親子の関係が見えるようですね。
話は変わりますが、STONESのKEITHがソロアルバムを出しましたね。お二人は、ソロの予定などは?
【鮎川】 シーナがYENレーベルから企画っぽいものを出しとるけど、ソロは実現したい夢だね。
特にここ2年くらいは強く思う。
ニューヨークに行ってハッピーハウス作ってからちいうのは、いつかチャンスがあったらって、いつも思ってる。
結構実現しそうなアイデアがたくさんあるし。本当に、なんか、僕らやりたいよね。SHEENA&THE ROKKETSは、これはもう大切なバンドで。
このバンドに不満がるからよそで作りたいじゃなくてね。
【シーナ】 わたしはシンプルなのを作りたいっていうのがあるの。歌とギターだけで。骨だけ、みたいなシンプルなやつを。
【BERO】 楽しみにしています。ところで曲は自宅で作ったりするのですか?
【シーナ】 ええ。
【BERO】 出来上がったら即、鮎川さんがギターを弾いてシーナが歌ったり! 凄い!
【鮎川】 今までほとんどそうやって作った。この前、ふっと昔のカセットでコンパイルちゅうかコンビネーション作ってみたら、
スタジオでやったやつより、そっちのほうが良かったなぁ。
【シーナ】 そういうの、いっぱいあるね。
【鮎川】 サウンドの広がりとかロマンチックな気分とか、表現したいこととかがバンドになるとぶっきらぼうに、
やたら現実的になったりする。
だからシーナが前から言ってるね。激しいのも求めてるけども、シンプルなものもやりたいって。
【シーナ】 線の強さっていうのがあるでしょ。サウンドの強さじゃなくって…。かえってそっちのほうがインパクトあったり…。
サウンド的には弱くても聴いた後でハードな印象が残るときってあるでしょ。相手は機械じゃなく人間だからメモリの問題じゃないわけ。
だから線の強さで作ってみたいなっていうのがあるわね。
【ナビ】 レコーディングするときは誰か対象を設定して歌ってるのですか?
【シーナ】 犬とか(笑)。
それはね、曲のためだったりね。たとえば曲ができるでしょ。「好き」とか思うでしょ。そのときはダイヤモンドみたいにキラッと輝くわけよ。
そして、もう一度会いたい、今のもう一度再現しよう、と思う。そんなドキドキした気持ちで歌ったりね。そうして出来上がった曲は凄くカワイクなったやう。
【鮎川】 だた愛のために…とか、ただロックのためにとか…。そういうふうになっちゃうんじゃない
【シーナ】 だから、自分のためですよね。
【ナビ】 ステージでも同じことがいえますか?
【シーナ】 そうね。ステージも、その瞬間、自分自身キラッと輝いたりできたら、見にきてる人達ともそんな気分が
分かち合えると思うのね。それがコンサートだと思うからね。私がつまらない気分で歌ってたら、見てる人も、きっとツマンナイだろうし。
うまく言えないけど、わかってもらえるかな?
【ナビ】 はい。では最後の質問になりますが、鮎川さんにとってシーナの存在とは。
【鮎川】 ……………。どういう存在……かちゅうのは………あのぉ……。
【シーナ】 ハンマー、とか(笑)。
【鮎川】 それは…、そうだねぇ…。そういう難しい……質問されると……宇宙みたいなもん……としか答えられんかなぁ。
絶対あるもんだし…。もうちょっとコマゴマしたことで言うたら、素晴らしいボーカリストだし、女だし、人間だし……。
人間だな(笑)。
僕は彼女がロケットのエネルギーになっとうことは絶対間違いないと思っとうし、僕がギター弾くときに目に見えん力みたいなもんを
与えてくれようと思う。でも、僕も力貸すし、出すし、お互い純粋に音楽が好きだし。
端から見たらおかしいみたいな音楽の話をずっとしてるし。
そういうときもあるし、で、実際、一緒に家庭もあるし、子供たちもいて生活してるパートナーだし。
…いろんな面があるけれども…。そんなもんかな。
【ナビ】 では、シーナにとって鮎川さんとは?
【シーナ】 う〜ん…。自然に戻してくれる人。いろんなもの、飾りとか余計なものを振り払って、OK。何もなくていい、私を子供にかえしてくれる人(テレ笑)。