ユーモアと躍動感にあふれる豪華な狂言

『唐人相撲』は、外人相撲または唐相撲とも呼ばれる狂言の演目の一つです。通常は2、3人で演じられる狂言には珍しく大仕掛けで華やかな芝居であり、皇帝をはじめ、日本人相撲取り、通辞、そして大勢の唐人たち、さらには、笛、小鼓、大鼓、太鼓の「四拍子」と呼ばれる囃し方、後見、幕上げを加えれば、舞台を埋め尽くすほどの人々が登場することになります。これほど多くの演者に、中国風のゴージャスな衣裳、唐音(とういん)というデタラメ中国語のセリフなど、制作・上演するにはあまりにも膨大なエネルギーを費やさねばなりません。しかし、困難が大きければ大きいほど野村万之丞の創作意欲は駆り立てられました。『唐人相撲』を上演したいと思った日から10年の歳月を経た1992(平成4)年12月3日、新演出と銘打った『唐人相撲』初演の日を迎えました。