万之丞語録5

仮面ほど正直なものはなく、人間の顔ほど嘘つきなものはないと思う。仮面を着ければ人間はスラスラと正直に自分の心の内を見せるけれど、素顔は「素顔」という仮面をかぶっているようなもので、なかなかその仮面が取れない人が多いんじゃないかな。仮面演劇での仮面は、それを着けた人と一体になれないと、まるで拒否するように振る舞い出す。仮面は衣裳を規定し、役者の肉体的動きを規定し、その人の性格にまでも影響を与えるんだ。仮面を着ける役者の心のなかが多少なりとも表に出ていけば、舞台の仕上がり方もまったく違ってくるのではないかと僕は思う。





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